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アルトから話を聞いた時から予想はしていたが、どこまでも予想を裏切らない奴だ。ジンの言う通り単純過ぎる。
カイからアルトに視線を戻したジンは、改めて彼らに向き直った。
「俺はジン。昨日は失礼な真似して悪かったな」
まさか詫びを入れられると思わなかったアルトは、驚いて一瞬目を丸くする。しかしすぐに人懐っこい笑みで応えた。
「はは、気にしてねぇよ。ちょっとびっくりしたけどな。俺はアルト。で、こっちはシエン」
よろしくと、ジンとアルトが互いに挨拶をする。シエンは一瞥しただけで特に反応を示さなかった。
ジンはそれを特に気にする様子もなく、カイを急かすように言葉を掛ける。
「ほら、早く二人の所に行ってやれよ、カイ」
だがカイは動かない。
あまつさえ欠伸を一つ零し、その場に仰向けに寝転んだ。そして、面倒くさそうに言う。
「…………何で」
「何でって……二人が捜してるってさっき言っただろ」
「だから?」
ジンは訳が分からなくて困惑の表情を浮かべている。
でもカイは、動こうとは思わなかった。何故なら――。
「行かなくてもどうせ来るだろ、アイツらなら」
首を傾げたジンがその意味を問う前に、カイを呼ぶ声が空に響いた。
ジンは振り返り、答えを知る。
ルーラとリフがこちらに向かって走ってくるところだった。
「――ホントだ。さすがだな」
「……ふん」
素直に感心するジン。その言葉をカイは得意気に鼻であしらった。
カイの元まで来たルーラの口から開口一番文句が飛び出す。
「あーもう! カイったら……こんな所にいた」
捜したんだからね、と言うルーラの目は、彼女とは対象的に何の反応も示さないカイへの不満を訴えている。
「ほらぁー、僕の言った通りだったじゃーん」
「だって……この時間にここにいるとは思わないでしょ」
どうやらこの場所を当てたのはリフだったらしい。いつもはルーラの後を追いかけるだけのリフにしては珍しい。
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