踏み出す一歩

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  そのせいか、リフはとても得意気にチッチッと指を振った。 「甘いよぉ、ルーラ。カイが予想を裏切るのはいつものことじゃん」 「……おいリフ、ちょっと面貸せ。鬼ジジイ並のゲンコツくれてやる」 その顔が腹立たしくて拳を握り締めれば、リフはまだ殴られてもいないのに、ギャーっと悲鳴を上げて頭を押さえた。 ルーラとジンが、リフのわざとらしい反応を見て声を立てて笑う。リフも頭を抑えた体勢のまま、すぐに楽しそうに笑い出した。 雲が緩やかに流れる青い空。そこに響く笑い声。――なんて平和なのだろう。 今まではつまらなかった。毎日毎日同じ時間に同じ事を繰り返す、何の変哲もない日々。 深く関わらないようにして、いつも離れた所で眺めているだけだった。仲間に入りたいとも思わなかった。 村に響き渡る程大きな笑い声を上げて、楽しそうに走り回る姿をただ目で追うだけで、自分から行くことはない。 ……いや、本当はその輪に加わりたかったのかもしれない。 「こっちにおいで」と誘いに来てくれるのを、そうして引っ張っていってくれるのを待っていたのかもしれない。 都合の良いことだという自覚はある。でも自分から入っていけるほど素直でもない。 いい加減この面倒くさい性格をどうにかしなければ。 笑い声に眠りを妨げられたのか、身じろぎしたギルティアスがのっそりと起き上がった。 「…………ん、騒がしい……」 「悪い、ギル。起こした」 「いや、構わない」 眠気を振り払うように頭を数回振り、欠伸を一つ漏らしたギルティアスは、何を思ったかカイをじっと見つめた。 「……何だよ」 怪訝に眉を顰めたカイを見て、ギルティアスは無表情だった顔にフッと笑みを浮かべた。 「カイは良い友人を持っているな。気にかけ、背を押してくれる心優しい人もいる」 いきなり何を言い出すのか、と思ったのはほんの一瞬。意味を理解して、カイは少しバツの悪い顔をした。 「お前……起きてたのか」 「完全にではなかったが」 肯定したギルティアスに何も返すことが出来ない。  
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