春風と共に

5/6
前へ
/461ページ
次へ
    「カイ?」   「……俺、もう帰るわ。 マーサが早く帰ってこいっつってたの忘れてた」     弓矢を肩に背負い背を向けたまま言うと、家に向かって歩き出した。   その後ろを二人が、 「ちょっと待ってよ~」 と言いながら追いかけてくる。   カイは二人がついてこられる程度の速さで、一人黙々と家へと向かって歩を進めた。     「━━……すまない。ちょっといいか?」     突然三人の背中に掛けられた声に、三人同時に振り返る。   どうやら自分達と同じくらいの少年のようだ。   詳しい年齢は、顔がフードで隠れているため判断出来ない。   その容姿にカイは眉を寄せた。   ━━と、フードから覗いた少年の宝石のような深緑の瞳と、カイの紫暗の瞳が交差する。   思わず二人の動きはピタリと止まり、暫くお互いの目を見つめ続けた。     「あの……何か?」     突然動きが止まった二人を比べ見ながら、少女・ルーラが遠慮がちに口を開いた。   その声が聞こえているのかいないのか、二人の動きは変わらない。   先に口を開いたのは、フードを被った少年だった。     「お前━━……カイ、か?」    
/461ページ

最初のコメントを投稿しよう!

508人が本棚に入れています
本棚に追加