闇影の接触

3/11
499人が本棚に入れています
本棚に追加
/454ページ
  話し合う二人の邪魔をしないようにとバルコニーに出てきたが、ふとあることに気付いて空を仰いだ。 (風が無い……) 建物に囲まれているせいで風向きによっては全くの無風になってしまうのか、風を感じられなかった。 こんなことは初めてだ。 いつ何処にいても常に風は吹くものだと思っていた。実際、村では風が吹かない日はなかった。 強くも弱くも常に風は村中を駆け巡り、それが当たり前だと思っていたのに。 いつもあるものがないと落ち着かないのは何故だろう。 場所を移動すれば少しは違うだろうと考えたカイは、外に出ようと思いバルコニーを離れた。 室内に戻ると、丁度話が一区切りついたのかレイとトールの視線が同時にカイに向く。 「ちょっと外に出てくる」 黙って出るわけにもいかないので、そう一言告げると途端に渋い顔をされる。 「何をしに?」 「風にあたりに」 「それならさっきまでバルコニーにいただろう」 「いたけど物足りねぇんだよ」 どうやら度重なる勝手な単独行動ですっかり信用を無くしてしまったらしい。俺も、と言い出さないうちに先手を打つ。 「コイツも連れていくから大丈夫だよ」 親指でドルガを指すと、壁に凭れていた彼が背を離しカイの後ろに立ったのが気配で分かった。 「……俺が一緒に行っては駄目なのか?」 少し沈んだ声にハッとしレイを見れば、声同様沈んだ顔でじっとこちらを見つめていた。 「せっかくこうやってカイと一緒にいるのに……やっと隣に戻ってきたのに。可能な限り傍にいたいと思うのは俺の我が儘か……?」 そう言われて初めてレイの不安を感じた。レイはまたカイが居なくなって、今度は二度と帰って来ないのではないかと案じているのだ。  
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!