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「そして、父親としての最後の言葉だ。――今まで悪かったな、浩雅」
赤子の手を捻るように、家から青年を弾き出す。未だ暖かい今の時期ならば構わないだろう。そう判断した上であった。
自分の近くにいては、決して安全とはいえない。
上に立つ者は、自分の性質をしっかりと理解していなければならない。理解した上で、男性は決めたのだ。
元々、そのために組を解散するとデマを信用する部下に伝えさせたのだ。真っ直ぐすぎる青年は、やはり想像通りの行動をとってくれた。
「…悪いな、浩雅。俺は俺で、ヤバイ仕事が入ってな…」
そして、青年がその家から出た――追い出された数日後、琥冬組の幹部数名の死体が発見され、琥冬 雅人の行方が消え失せた。
青年が其れを知るのは、その後二年の歳月を要す。
「…どうしましたか、…その、こんな…ところで……」
片手にスーパー袋、もう片手に青い傘を持ちながら、少女は訪ねる。雨が降っているにも関わらず、座り込む金髪に向かって。小さく小さく、ニャーと鳴き声が聞こえた。
少女は風のせいで遮ることのできない雨を、気にすることもなくもう一度訪ねる。先程よりもしっかりと、声を出して。
ゆっくりと顔を上げ、少女の顔を見るその瞳は、綺麗な青い輝きを持っていた。もう一度、ニャーと鳴き声が聞こえる。と、同時に金髪の青年は口を開いた。
「――――」
そして、二人は出会う。
そして、ブザーを鳴らし物語は幕を開く。
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