木村佳祐

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  「っ。離せ! 万引きなんかしてねーよ」 「取りあえず来て下さい」 「! 離せ、離せよ」 「騒がないで下さい」 香水がキツく、化粧の濃い、オレンジ色のショートカット。目を合わすと俺まで汚れそうな、異様なケバさだった。 しばらくするとその女子は大人しくなり、仕方なさそうに椅子に座った。 女店員に腹部を確認してもらうと、やはりそこから大量の菓子パンが出てきた。すべてクリームパンだった。 「“離せ、万引きなんかしてねぇよ!”………ハッ」 俺は先ほどの彼女のセリフを復唱して、鼻で笑ってやった。 女子はテカテカ光る異様に長いまつげを伏せて、横目で俺を睨みながら、足と腕を組み直した。 「親とガッコーに言うわけ?」 「言いますよ。今までいくつ盗んだと思ってるんですか」 「はじめてだし」 「防犯カメラ見ますか?」 「うざ」 「取りあえず、店長呼びますね」 最近の女子高生はコワい。いろんな意味でコワい。 強そうだし、ひとりで生きていけんじゃね? 心はガラス細工なの。ってか? 馬鹿じゃないの、極太神経が。 ジュース、何にしようかな。  
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