木村佳祐

6/8
前へ
/31ページ
次へ
  そしてその翌日が学校とか。 もう面倒くせ。早退しよっかな。 「なー、女紹介してくんね?」 俺のメランコリックに気付かないクラスメートが、携帯電話を構えてやって来た。 「……」 「おい、無視すんなよ! お前は彼女いるからいいだろーけど、俺は」 「別れた」 「はぁ!?」 「振られた」 「また!??」 「面倒くさいんだよな」 「お前、来るもの拒まず、去るもの追わずだよな」 ニヤニヤ笑いながら、クラスメートは去って行った。 別に、来るもの拒まずってわけでもない。 キスだって拒んだし。なんか気持ち悪いんだよな、そういうの。 今まで付き合ってきた女の中で、触れたことがある奴は一人もいない。もちろん手を繋いだこともない。 俺、異常なのかな。だからいつもすぐ振られる。 女好きとよく人に言われるけど、そんなことはない。むしろ苦手だ。 女からの告白を断ったことがない。というのも、女を好きだと思う感情を知りたいから、試しに付き合ってみるだけだ。 未だ、好きだと思えるような恋はしたことないから、無意味な交際なのかもしれないけど。 女と接してると、野良猫の相手をしている気分になるんだ。汚くて、処女性なんてこれっぽっちもないのに、可愛くて守りたくなる。 あの万引き犯は、猫というよりは、ライオンだったけど。 しかもオスの。 「おい」 突然後ろから声をかけられた。どこかで聞いたことあるような、無駄にギャルギャルしいこの声は……。  
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加