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「……やっぱり」
噂をすればなんとやら。
振り向いたら万引き犯がいた。そういえば同じ学校だったっけ。
相変わらずふてぶてしく腕を組んで、こちらを見下ろしている。
俺は耐えれない視線から逃れるべく、席を立った。
女の身長は俺より少し小さいくらいで、長身の店長には丁度いいんだろう。
オレンジ頭が地毛に見えるほど、髪の根元から完璧に染まっている。ギャルはプリンになってるイメージがあるのに、金かけてるな。
ますますライオンみてぇ。
「昨日のこと、誰かに言ったりしてねぇだろうな?」
「してないよ。あの店長、トシのわりに力強いから」
「トシ!?」
「三十路でしょ」
「死ね」
ひとつ間違えれば、露出魔と疑われんばかりの短いスカートから細長い足を大きく上げて、ガン、と、机を蹴り上げた。
格闘ゲームばりの鮮やかな脚力に、クラスメートの視線が突き刺さる。
店長といいこのギャルといい、手癖足癖悪すぎなカップルだろ。
同族嫌悪ならぬ同族愛慕?そんな言葉あるんか知らんけど。
「ほんとに、誰にも言うなよ。言ったら死ねよ」
「あは。殺す、じゃないんだ。それって俺が自殺する的な?」
「ちったぁ黙れや」
ガン。
また机に攻撃。俺の心に100のダメージ。
「おー、別れ話か?」
「あの人って2組の立花サン?」
「あれが? 友達の言ってた通り」
「なに?」
「ギャハッ。佳祐やべー」
「修羅場?」
クラスメートのガヤが、何故か他人事みたいに耳に入る。
こういうときって、渦中のくせに冷静になれるよな。
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