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既に抜刀し、今にも襲いかから
んとする気配。周囲に満ちるは
月の冷気と、それよりも冷たい
殺気。
「やれやれ……。囲まれてしま
ったか」
困った顔をして呟いた。
どうやら敵は、一度に襲いかか
ってくるつもりらしい。頭の合
図を待ち、身動きひとつ取らな
い。
……むしろ、好都合というも
のだろう。さぁ、早く俺を殺
しに来い。
そう思った時だった。すべての
敵が突然に走り出し、一気に間
合いを詰めてきたのは。
迫り来る二十の足音。重苦しい
圧迫感を覚えた。
あと五、六歩のところまで敵が
迫ったそのとき、漸く俺は呼ん
だ。
「……右京〔うきょう〕」
.
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