壱ノ華 『月下』

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右京はすぐに立ち上がると、蹴 られた衝撃からまだ抜け切れて いないそいつを、肩から腰にか けて一閃。 一瞬にして絶命させた。 不意に、俺に近づく敵がいた。 長々と右京の相手をするより、 さっさと俺を殺してしまった方 がよいと考えたのだろう。 だが、そう易々と上手くいくは ずはない。 俺の危機をいち早く察知した右 京が、身を翻してその敵へと向 かう。 キンッという、硬質なもの同士 がぶつかり合う音が、俺の左側、 あまり離れていないところから 聞こえた。 そちらにちらりと視線を送れば、 視界に入ったのは右京の背中。 そして奴と刃を交える、ひとり の敵だった。 二人はそのまま戦い始める。相 手が地面に倒れ伏すのも、時間 の問題だろう。 右京が現れてから俺は、一歩た りとも動いていない。それが奴 の凄さなのだと、俺はつくづく 感心させられる。 周囲には七つの死体。こいつら も俺の命を狙ったりなどしなけ れば、こんな目に遭わずに済ん だだろうに。 .
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