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双山恭介は教室を出た。時刻は午後五時、この日はもう授業は無い。
廊下を歩き、薄暗い照明の階段を降りて、学生棟を出た。
入口の前で立ち止まり、携帯電話を取り出して、村崎に電話をかけた。
しばらくコールして、相手が電話に出た。
「もしもし?」村崎の声である。
「今どこに居る?」
「大学の購買部」
さっきの授業の前に彼と会ったので、授業も無いのに、一時間も大学の中に居たようである。
「どこの購買部?今から行くよ。用事あるか?」
用事の有無を確認し、村崎に購買部の位置をきいて、そちらに向かって歩き、十分程でついた。
購買部の奥に入っていき、村崎が一人で本を読んでいるところを発見し、横から声をかける。
「何してんの?」
「本を読んでいる」村崎はぶっきらぼうに答える。見ればわかるわ、なんて事は言わず、双山は苛立ちをコントロールする。
「一時間も大学に居たの?」できるだけ、ナチュラルに尋ねる。
「一時間も六時間も変わりはない」彼は最小限の動きで、ページを捲った。
「腹減らない?」
「あんまり、まだ五時だ」
双山は携帯電話の時計を確認する、五時二十分、確かに、まだ夕食には早いかもしれない。
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