矛盾の綺麗さと殺人の美的さ

12/18
前へ
/44ページ
次へ
7 竹内由麻が座っているベンチに、二人の男が向かってきた。双山と村崎である。彼女は手を振って迎えた。 「人前で手を振るのはやめてほしいなぁ」双山が周りを見渡して言った。 「何で?」由麻がきょとんとした顔で言う。 「目立つ」村崎が言った。「別の言い方で言うと、恥ずかしい」 「だから、何で?」 「何か用?」双山が煙草を取り出しながら言う。「飯なら僕達はもう食べたよ」 「私はご飯いらないから」 「へぇ、ダイエット?」双山は煙草に火をつける。 「違いますう、内臓の写真が頭から離れないからなのよ」由麻は口を尖らせる。 いつのまにか、村崎も煙草に火をつけていた。気配の無い男である。 「あのさ、瀬戸市の事件の事なんだけどさ」由麻は顔の横で両手を広げてみせた。そのジェスチャの意味はわからなかった、やった彼女自身もである。 「また、その話題?もう飽きちゃったなあ」双山が煙を吐きながら言う。 「何か新しい情報があるのか?」村崎が言った。 「うん、あるよ。これが。さて、はたして、何でしょうか!」 「もったいぶらないで早く言ったら?」双山が煙草を灰皿に捨てる。 「双山君は冷たいよう、しくしく」 「だから、何なの?」村崎が急かす。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加