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竹内由麻は大学内で友達とおしゃべりをした後、大学を出た。
時刻は午後五時三十分、外は夕日で明るく照らされ、大学の建物も、綺麗なオレンジにペイントされていた。
双山はもう帰っただろうか。
バッグの中から携帯電話を取り出し、モニターを確認しながら、双山に電話をかけた。
しばらくコール。
なかなか電話に出ないため、切ろうかと思ったとき、相手が電話に出た。
「何?どうしたの?」双山の声である。電話口の雑音から、一人ではないことがわかった。
「今って一人?」一応、きいてみる。
「いや、村崎と居るけど、どうした?」なんだ村崎か、と由麻は思った。
「今どこ?」
「えっとね、大学の中」双山が答える。村崎の声は全く聞こえてこない。
「ご飯食べに行かない?」
「ちょっと待って、おい村崎。……うん、……そう、…竹内が、…行くの?……わかった」
「どうしたの?」応答が遅いので、きいてみた。
「行くよ、村崎も行くってさ」
村崎も居るのか、と思った。実際、彼が居ても面白くはない。
「じゃあ、今から村崎と出るよ、何処に居る?」
「大学の西口」
「わかった、今から行くよ、十分くらいかな、待ってて」
「わかった」わざと、力なく答えた。電話がきれた。
由麻はキリンの首のように長い溜息をついた。
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