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息子は必死に走った。自分の家まではまだ雲が来てない。大丈夫。
少年の周囲に降る雪は、まだ柔らかい固まりだった。
地面に落ちても、ボスリという程度。当たっても、目眩がする程度。
「もう少しだ。何でこんなに雲が早いんだろう」
少年は疑問に思った。無理もない。雲がビデオの早送りのように動いているのだ。
「着いた! お父さん! お母さん! 美雪ー! うわ……」
少年が家の門をくぐろうとした瞬間、真横から突風を受けた。
勢い良くすっ飛んだ。
耳をつんざくような突風。
倒れながら家を見ると、大きな雲から何かが落ちた。ドカンという轟音。
「お父さん! お母さん! 美雪ー!」
少年は強風で立つことも、前に進む事も出来なかった。
凍えて死にそうだと思う以前にこの風を呪った。
強風が起こると、悪魔が降るとの諺ができた。
巨雪雲が風で1つに集まり、凝縮された氷が落ちる。とてつもない大きさの氷が。これが悪魔の正体。
ただ、雪が氷になる理由は解明されておらず、現代も謎に包まれたままである。
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