プロローグ

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 父と息子は、沢山の果物と、母親に嫌われている煙草を買って家に帰る。 「お前冬にアイスはないだろ……ちょ! 外でアイスを食べるなー!」 父親の慌てる姿が息子には楽しく見えた。 「僕は寒さに強いんだもん! へっちゃらさ!」 と、外の寒さも全く気にしない。妹は体が弱い代わりに、兄は体が強く生まれたらしい。 「理解できないな。お前は母さん似だよ。母さんも寒さに強いしな」 「お母さんは、父さんの方が寒さに強いと言ってたよ」 と父の言葉を返す息子。平和な日々だ。空も青空。大量の雲。雲が夕焼けに染まっていた。 「もうすぐだね。美冬喜ぶだろうな! どうしたの? 父ちゃん?」 父親は、唖然としていた顔を今も忘れない。 端正な顔が醜く歪んでいた。 「何だありゃ……雲が雲が泳いでやがる」 そう。雲が物凄い早さで突然動き出したのだ。 そして、雲から白い何かが沢山飛び出した。 綺麗だと、一瞬見とれた。 だが、少し経って、それが綺麗な物ではなく、爆弾だという事がわかった。 天然の爆弾。雪の中には氷が。 「何だ! 固いぞ! 屋根を破壊してやがる! ただの巨雪じゃない! 走るぞ! 雪彦!」 父と息子は走った。巨大な雪を避けながら。     「真美ー! 美雪ー!」 父親の速さに息子が追いつける訳もなく、あっという間に見えなくなった。
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