楽しかったあの頃。

6/7
前へ
/121ページ
次へ
「…美紀だよ。同じクラスの天乃 美紀」 『………』 僕を除く全員が急に黙り込んだ。 「…天乃、ね。確かにあいつ、可愛いしな」 そんな中、最初に口を開いたのは意外にも三岡くんだった。 「まぁ、いいんじゃないか?」 「だよな。お似合いだと思うぞ?」 それに続いて他の二人も沈黙を破った。 けど、珍しく鍵は黙っている。 あれ?なにこの気まずい空気。 僕、なんかした? どうしたのだろう?と僕が考えていると黙っていた鍵が 「くっ、まさかマジで答えるとは。…ハジメ、お前もなかなかやるな。この掛井 鍵斗、録音し忘れるなんて一生の不覚だったぜ」 とかなんとか言ってるけどそれは褒め言葉と受け取っていいの? 腹を抑えて笑いを堪えてるように見えるけど、褒め言葉でいいんだよねぇ!? 「もっ、もしかして皆、冗談で言ってたの?」 恐る恐る尋ねる。 すると、鍵以外の三人が僕から目を逸らす。 「そうか。皆、僕を騙したな!?ひどいよ!もう、こうなったら鍵も巻き込んでやる!鍵は正直に答えてよね!?」 「わかったよ、まったく」 鍵はそう言うと小さくため息を吐き、すくっと立ち上がった。 「俺が好きな奴はな―…」 ゴクリと僕や三岡くん、そのほかの二人も固唾を飲んで鍵の言葉を待つ。 そしてよく通る声で僕らにむかってこう言った。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加