あの人が私を呼ぶ声

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1年前、東京――…‥ 「えっ、パリ異動?!」 私は店長の言葉を思わず聞き返した。 「そう! あなたの接客態度と学歴が功を奏したのよ~。よかったわね」 子どもの頃からずっとパリで働きたかった。 物心もついていないような小さい頃、住んでいたパリ。 子ども心ながらに、`働くお姉さん'に憧れていて、将来絶対この国で働いてやるって決心してた。 フランス語はもちろん、フランスの歴史、文化、伝統。 全て猛勉強した。 そして有名私立大学の仏文学科を首席で卒業。 自分でもほんとによくやったと思う。 全てはパリで働くため。 そう思えばそのくらいの努力、全然苦じゃなかった。 「パリ異動願い、3年間ずっと出してたものね」 「はい、いつからですか?」 「来年の4月からよ」 ああ、嬉しい! やっと、やっと私の夢が叶う。 やっと学生時代の努力が報われる! 唇の端から自然と笑みがこぼれてきた。
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