あの人が私を呼ぶ声

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「さて…昨日は弟たちが失礼しました」 私はファミレスに連れて行かれた。 事務所とかに連れて行かれるものだと思ったから、少し拍子抜けしたんだけども。 いえ…と私はかぶりをふった。 きのう助けてくれた人だった。 いくつだろう。 さっきは20代後半に見えたけど、そばで話すと少ししわが目立つ。 「ところで…パリに行かれるんですって?」 男がさらっと放った言葉は、まるで私のことは全て見透かしているかのようだった。 こくん、と私はうなずいた。 「どうして…ご存じなんですか?」 「別にこのくらいのことを調べるのは大したことじゃない。あなたが幼少の頃パリにいらしたこともすぐ分かるんですよ」 …怖い。 きのうがなりたてていた2人とはまた違う、体中にひしひしと感じる恐怖だった。 私は声を出せなかった。
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