あの人が私を呼ぶ声

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「でもね、ひとみさん」 男は私にぐっと寄って、声をひそめてそう言った。 「俺だったらなんとかしてあげられるよ」 「え…?」 私は思わず顔をあげた。 「俺が肩代わりしてあげますよ。俺の金で借金は返せばいい」 なぜそんなことを? でも男の言葉で、真っ暗だった目の前に、パリの生活が垣間見えた気がした。 「ただそのかわり…」 男はニヤッと笑って続けた。 「俺ずっとパリ行きたかったんだよねぇ。パリで探したい人もいるし」 …? 何が言いたいのか分からない。
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