あの人が私を呼ぶ声

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背の高いこの男が立つと、威圧感がある。 筋肉ががっしりとついた右の二の腕には、5つのほくろが変わった形で並んでいる。 そして、左の二の腕には入れ墨。和彫りらしい。詳しくは知らないけど、かなり痛いっていう。 きっとした目つきに高い身長。 鼻も高く、すっきりとした顔立ちで、わざわざ私を無理に犯さなくても女には困らないと思う。 正直、かっこいい。 ただ、雰囲気が普通じゃない。 カタギじゃないってはっきり感じさせる。 だから女できないの? そいつはソファの近くのテーブルに近づいてきた。 「近寄んないでよ…っ」 私はくだらないことを考えるのをやめ、毛布にくるまって自己防衛した。 「煙草吸うだけだよ」 男はさみしそうに微笑みながら言った。 …時々こいつは、今みたいにすごく悲しそうに話す。 少しドキッとしてしまうくらいに。 なんなの、一体…。
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