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「…あんたも切れやすい性格だけは、ずっと一緒ね」
マルンはヨーヨーで、正確にはヨーヨーから出ている鎌のような刃物で、プリンセスの大剣を受け止め、意地悪そうに笑う。
「くっ…だいぶ改造したのね、その玩具」
プリンセスは、大剣を引き下げる。
「可愛い出来栄えでしょ?」
とマルンもヨーヨーから刃物を、引っ込める。
「ふん。
下品なあなたには、お似合いよ…」
ウォォーン……
「!
あらやだ!もう、こんな時間!!
戯れが過ぎたようだわ、さあ璃乙来なさい」
「えっ!や、やだよ!」
プリンセスは、璃乙の手を掴もうとするが、マルンがプリンセスの手を払い、阻止する。
「どういうつもりかしら…?
これは明らかに妨害してるわよね」
払われた手を擦りながらプリンセスは、マルンを睨む。
マルンは、ただ悪戯っ子のように笑う。
「んーん、そっちが妨害してんの。
璃乙!あたしが道を作るから走って!!」
「う、うん!!」
マルンは叫ぶと同時に、再びヨーヨーから刃物を出し、プリンセス達に斬りかかる。
「!?
させるかぁ!欠片共!違犯者を殺せぇ!!」
「「はっ!」」
欠片共と呼ばれた使いの者は、マルンに襲いかかるが、マルンはことごとく蹴散らす。
「ちぃっ!役立たずが!
二人共お待ちなさい!」
使いの者が全員薙ぎ払われたプリンセスは、大剣を構え斬りつけるが、マルンが透かさず止める。
「今だ!そのまま走って璃乙!
あたしに構わずに行って!あたしの仲間が、きっと待ってるから!!」
「わ、わかった!!
ごめんね!!!」
マルンの掛け声と同時に璃乙は、マルン達の横を通って駆け抜けた。
「あっ…!待ちなさ…」
「行かさないよ」
マルンはポケットから、もう1つの青い縁取りのヨーヨーを取りだし、プリンセスの腕に紐を絡ませ、プリンセスの動きを封じる。
不意に後ろを振り返った璃乙は、その光景を見て目を見開き、前を向き耳を塞いでがむしゃらに走った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…ごめんね、ごめんね、ごめんね…」
そして、マルンなのか誰かに向けられた謝罪の言葉を呟きながら、ただ走った。
第三章――終
次章――『那柘樹』に続く
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