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――璃乙だ……
鍵だ……
ついに来た……
やっと来た
さぁさぁ扉を 開けましょう――
その声は、まるで御伽噺(おとぎばなし)の歌を、小さい子に聞かせるように、口ずさんでいる様だった。
「……?」
璃乙は、ゆっくり顔を上げた。そして、ああ懐かしい口調だと他人事のように思った。
先程の事が余程ショックなのか、もはや自分の名前が出たことさえ、どうでも良いことと思ったようだ。
璃乙が、ぼうっと聴いていると、口ずさんでいた5~6歳位の小さな子供が、璃乙の目の前に来た。
その子供の身なりは、正に貴族と言っても可笑しくはないだろう、寧ろ王女そのものである。
後ろにも数人の、その子と同年代位の、子供が居た。
身なりは前に居る子とは打って変わって質素な白いワンピースだった
「君はだあれ?」
璃乙は虚ろな目で呟くように聞いた。
王女の格好をした子は、にっこりと笑い
「プリンセスですわ、後ろのは家来ですの」
プリンセスと答えた少女はドレスを少し摘み上げ、ゆっくり頭を下げお辞儀をした。
後ろの家来達もお辞儀をした。
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