恐怖が導く結果

12/12
前へ
/136ページ
次へ
「それに?何?」 「お父さんだって、言ったよ。お前が男だからむかつくってね。」 「確かに父は自分の本当の息子を可愛がっていた。私の弟はね。でも、年上に当たる智成が長男になる状態に我慢できなかったようだね。それが虐待の主因だったらしい。 しかし、まさかそんな発言を浴びせるなんて。私は自分の父を最低な人間だと思った。」 「みのり姉ちゃんは僕の邪魔をするつもり?僕が死んじゃってもいいの?」 「「死」という言葉が出た瞬間、私はこれ以上、反論したら取り返しがつかなくなる事態が起きそうで怖かった。」 「でも、このままではいけない。何とか男の子に戻って欲しい。その方法を見つける為、私はこの高校に入ったの」 「ごめん、相談しに来てくれたのに、一方的にしゃべっちゃって。」 みのりは謝った。 「いいよ、いいよ。長澤さんも大変だね。」 詩織が答えた。 「詩織ちゃん、私は確かに大きな悩みは抱えている。でも、それを苦痛と思ったらしんどいだけ。何も生み出さない。 それに悩みの大小というのは他人には計れないと思う。もちろん、その道の専門家とか経験者は計りやすいかもしれないけど、それでも正確だとは言えないと思う。 「栗原さんは、自分の悩みがちっぽけって片付けられてほしいの?」 詩織は改めて考えてみた。そんな風に他人から言われたのは初めてだ。 「むかつくかな?私の何を知っているの?って思う」 「それが普通だよ。だから、自分を卑下することはないんじゃない。まだ戻れないなら、それでも、いいんじゃない。 私は智成を戻したいとは思う。でも、詩織ちゃんに対しては、そうするつもりはないから。」 みのりとの話の後、詩織は考え、もうしばらくはこの高校に止どまろうと結論を下した。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加