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清花(さやか)は困惑していた。
いじめっ子の香苗がニヤニヤしながら、階段の踊場で話しかけてきたから。
「あのさあ、あんた知らないのぉ?いつかあんたも行くことになるよ」
「どこへ……」
香苗は結った髪をまとめるチェックのリボンを揺らし、憎々しげな表情で覗きこんできた。
「7不思議の最後!第2理科室だよ!あんたみたいなの、生きたまんま標本にされちゃうよ!」
壁へ追い詰められた清花は耳をふさぎ、おかっぱの髪を揺らせて首をブンブン振る。
そしてぺたりと座り込んだ。
「こいつ漏らすんじゃね?」
「やだぁキモっ!」
けたたましい笑い声をあげ、派手な少女は仲間の潤子達と一緒に階段を駆け下りていった。
小さく縮こまってていた少女は、うつむいたまま震える唇を噛みしめる。
『第2理科室……最後の7つ目……知っちゃったらあれがくる……!』
清花は、ざわざわと闇の粒子が周囲を覆っていく妄想に囚われる。
『来る……来ちゃうんだ……』
それは10歳の少女を暗い愉悦に誘う呪文であった。
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