Prison

2/8
978人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
今日は、妙に水が身体に纏わり付いた。 何時も同じ温度・同じ水なのに、 そう感じたのは気の所為では無いと思う。 周りは、自分を映しこむ鏡の様な硝子。 天井からぶら下がる180面にカットされたクリスタルプリズムが太陽光を七色に染め上げ、僕の身体にきらきらと反射する。 全身の鱗が、元々の色であるラベンダーとシルバー以外の色にくるくると変わり、少し満足した。 顔だけ水の上に出してふわりと浮かんでいるだけの僕は、慣れぬ光に耐えられずに目を瞬かせる。 アクアリウムの硝子と水の揺らめきが、今日はとても眩しい。 今はアクアリウム開園中だったけれど、<下>へ行く気は無かった。 確かにこの光効果は僕を『見せる』為にあるものだけれど、今はこの美しい光のショウを僕一人だけのものにしたかった。 開園し、一時間は経ったかも知れない。 やがて、上面に架けてある人間用の足場に、何時もの様に彼が下り立つ。 一日に四回ある、僕の『ショウ』がまた始まるのだ。 「どうしたんだ…Quel(クエル)。皆、きみの声を聴きたくて集まっているんだよ?」
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!