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──暗い。何も聞こえない。
目を開いて周りを見渡した時に感じた第一印象はこれだ。周りを見渡せど其処にあるのは闇ばかり。音源になりそうな物など此処には無いのだろうか。
此処は何処だ? 何故俺はこんな場所にいる?そもそも『俺』って誰の事だ? そうしたら『俺』は何だ?
分からないわからないワカラナイ。
恐い。何が恐いのか分からないけど恐い。『俺』の正体が分からないのが恐い。『俺』はこの闇の一部なのか?
……そうか。『俺』が闇なら全てを受け入れれば良い。そうすれば『俺』は闇として存在出来る。こんな曖昧で不確定な物じゃなくなるんだ。
『俺』は『俺』に言い聞かせゆっくりと目を閉じる。ほら、目を閉じてじっとしていれば『俺』は闇と一つになり、存在を得る事が出来るんだ。
『違う』
不意に頭の中で聞こえる女の声。脳髄に染み渡り『俺』の全てを包むような声。誰だ?何が違うんだ?
『貴方は闇なんかじゃない。私の……私の大切なご主人様』
優しく『俺』を宥める(なだめる)ような声。この声は聞いた事がある。
『悠介さん、私の名前を呼んで下さい。忘れてしまいましたか?私の名前は──』
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