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「似てたんだ、あの時初めて見せた本物の笑顔が。奥さんが初めて見せた笑顔にさ。」
「へぇ~。優人さんは私じゃなくて、私に見えた昔の奥さんの面影に惹かれてたんだ。」
まさかの一言。
優人さんの口から、初めて奥さんのことを聞いた。
愛がないことは、覚悟のうえ。
でもムカついたから、トゲのある言い方をしてやった。
すると優人さんが、軽く笑った。
「そうやって言うと思ったよ。でも違う。それはただのきっかけさ。あいつとお前は正反対だ。あいつはお嬢様で、家族に愛されてぬくぬく育ったんだ。だから、見せられないんだよ。」
「見せられない?」
「あぁ。世間知らずのお嬢様で、ドロドロした世界なんて知らない。だから、本性見せにくくて。いつの間にか見せられなくなって、自分作るようになった。」
「息苦しいね、そういうの。だから、家に帰んないの?」
「そんなとこ。お前には、わかるんだよな。」
「息苦しい、生活してたからね。私が見てる優人さんは、本物?」
「そうだね。お前には、素直に見せられる。それがすごく心地良くてさ。いなくなったら、ダメな存在になってた。」
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