忘れられない

引っ越し

３月１日、朝７時。
普通に家を出た。
見送られるわけでもなく、挨拶もすることもなく。

電車で２時間。
少し近い気はするが、そうそう知り合いには会わないだろう。

駅を出て、駅裏のほうに約２０分ほど歩いた。
予定していた１０時より少し早めに着いたが、管理人さんは待っていた。

「浅見さんですか？」

「はい、浅見昴です。今日からよろしくお願いします。」

深々と頭を下げた。

「あの…ご両親は？」

「私１人です。両親も一緒じゃなきゃ駄目でしたか？」

「あぁ、大丈夫ですよ。では部屋の案内と、簡単な説明をさせてもらいます。」

管理人さんから部屋の鍵を渡された。