訪問

4/7
前へ
/274ページ
次へ
「悪いね、気ぃ遣わせちゃって。」 「いいえ。テレビでも見て、くつろいでてくださいね。」 そう言って、キッチンに向かう。 鍋の蓋を開けて、味見をする。 具に味もしみて、出来上がりだ。 茶碗にご飯を入れ、器に肉じゃがを盛ってリビングへ。 「お待たせしました。」 「お!肉じゃがじゃん。いただきます。」 「どうぞ、召し上がれ。」 「うん、美味しい。いも柔らかく煮てあるし。」 「ホントですか?」 「ホントに美味しいよ。」 優人さんはそう言って、残さず食べてくれた。 なんだかそれが嬉しくて、人のために何かをする楽しみを初めて感じた。 そして誰かと食卓を囲む暖かさも、同時に知る。 両親とはほとんど一緒に食べなかったし、一緒に食べるのは苦痛だった。 1人暮らしを始め1人で食べる食事は、実家に居る頃より美味しく食べれた。 真矢たちと食べる食事は、賑やかで楽しかった。 でも優人さんと食べる食事は、楽しいだけじゃなかった。 なぜか暖かくて、心地良くて。 これが幸せなんだと感じた。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2976人が本棚に入れています
本棚に追加