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胡蝶は近くにあった花を一輪取り、机に置いた。花の部分だけをとり、茎をごみ箱に捨てた。
「略式になりますけど…」
そう胡蝶は呟き、花を手で覆った。
「我、花と共に生けし者。汝の力、我欲し我の力とならん」
花が白く光り、宙に浮く。その光景を目にし、男は意外にも微動だにしなかった。
「意外…。驚きもしないなんて…」
胡蝶はそう問いかけると、花が砕けたのを確認し、手をのけた。
「昔、見たことがあった。あの時は石も使われていたが…」
「はじめに“略式”って言ったでしょ…。卯の花の花言葉である“秘密”が、今から話すことを秘密にしてくれる」
「つまり?」
胡蝶は男の目を見て言った。
「貴方が今から言うことを第三者に言えば、貴方の記憶が抹消される。――――――私も、話してしまえば同じように抹消される」
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