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落ち着いた?
マフラーを巻いた少女はそう言って、またにこっと笑った。
私は涙を拭いながら自然と笑顔になっていた。
久々だな…こんなに笑顔になったの…。
そんな事を思いながら、有難うとお礼を言う。
でも…
何故かその少女に見覚えがある。
初対面な筈。
だけど、私の記憶にはその子がいる。
肝心なその記憶はノイズだらけで意味不明だけど。
深く考えるのは止めた。
過去、未来。
私にそんなものはないのだから。
手を振ってその子に別れを告げた。
そして、あの子が案内してくれた、黒い門の前に立つ。
手を置くと、自然に吸い込まれていった。
白黒。何もかも。
そんな風景だった。
嫌な予感がする。
私の本能がそう訴えかけた。
だけど、進む。進まなければならない。
自転車に乗って、ペダルを踏んだ。
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