‐よっかめ‐

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自転車を止めた。 不自然に短いトンネルがあった。 …怪しい。 きっとトンネルの向こうはまた違う世界があるんだろう…。 雪国的な何かが。 中には白黒のツインテールの少女がたったひとり。 悲しそうな顔でこっちを見る。 彼女も見た事がある。 私の記憶は…一体何を伝えたいの? タスケテ そう口が動いた。声は聞こえなかった。 でも私はどうしようもない。 助ける方法が分からない。 ごめんね…私はあなたを助けられない。 そう心で思いながら背を向けて出口に向かって歩き出した。 メキッ 私の足が硬直した。 今の音…何…? タスケテクレナイノ? 声が響く。肉と骨が裂けるような音と共に。 内臓が弾ける音も増えた。 ネェ、目ガ熱イノ…腕ガトッテモ痛イノ…頭ガオカカカシククククナナナナナルルルルルルノノノノ 包丁を無意識に握っていた。 後ろを振り返りたくない。とんでもない怪物が居そうで。 あの子が恐ろしい姿になってるのを見るのが嫌で。 だからきっと包丁を握っていたんだと思う。 勇気を振り絞って振り返った。 目の前にはあの少女がいる。 だけど、彼女の姿は奇怪だった。 頭からは腕が飛び出て、片腕は二股に分かれて、瞳孔から、妙にべっとりした液が流れていて、お腹の部分は異様なへこみ方をしていて。 その「怪物」が近付いてくる。 私は包丁を構えた。 意識で動いていたら、きっとゆめから覚めていた。 けど…。 生暖かい液体が手を染めた。 少女がこっちを見て、にやっと笑った。 アーア、ヤッチャッタ クケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ 少女は倒れ、真っ赤な水溜まりだけ残して消えた。 そこでゆめから覚めた。
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