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本当に先生は階段の前で待っていてくれた。
「おかえり。」
私はまた笑顔になる。
けれど、その笑顔はきっと悲しい笑顔だった。
おかえりなんて、私には似合わない言葉だから。
私に帰る場所なんてひとつもないから。
先生は何も言わずに、私を部屋へ促した。
「いつでもおいで。
いつでも、君の力になる。」
ふっと笑って、頭を撫でてくれた。
私の帰る場所。
それが、このゆめなのかもしれない。
そう考えた。
今さっきまで、帰る場所なんて無いって思ってたのに。
こんな狂ったゆめでも、私を思ってくれる人がいる。
私の存在を、認めてくれる人がいる。
私に、おかえりと言ってくれる人がいる。
先生に抱きついていた。
涙がぽろぽろ落ちる。
先生は、いつまでも、優しく受け止めて、頭を撫でてくれていた。
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