‐なのかめ‐

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気付いたら、電灯と人の壁が混じった世界に私は居た。 電灯に照らされて、また、私についた大量の血を見てしまって、目を閉じる。 ゆめをいとおしいと思う一方で、やっぱりゆめを憎む心もある。 私を認めてくれる人も居れば 私を怖がらせて、狂わせる、嫌なヤツも居る。 現実の外の世界も一緒だった。 私は、引きこもる前を思い出していた。 ずっと引きこもってたなんて嘘。 私は外に行った事がある。 私に両親はいなかったけど… 友達も居た。 親友も居た。 だけど… 私の周りでは不幸ばかり。 それを私のせいだって思って それ以来、部屋から出ない日々。 私のせいじゃないかもしれない。 ただの偶然に過ぎないのかもしれない。 だけど私は、友達を守る為に引きこもった。 誰も、傷付けたくなかったから。 痛みは、私だけで十分だから。 目を開けると、私よりもちっちゃい電灯が私に向かって歩いてきた。 一生懸命ぴかぴかさせて、私を元気付けようとしてる…? ふっと笑って、その電灯を撫でた。 私の中に入る感じ。 「でんとう」の文字が染まっていた。 ふぅと息をついて、また歩き出した。 血も、血の染みも、血の感覚も消えていた。 扉を開けて、また人の壁の部屋に戻ってきた。 進まないと。
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