‐なのかめ‐

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人の壁を見ながら、自転車を漕ぐ私。 しばらく進んだとこに、またしきりにちかちかした扉。 全体的に暗い雰囲気なのに、壁とか扉がやけにうるさいのは敢えて…かな? まあ扉が光ってるだとか人の壁がどうとか、私には関係の無い話。 扉を開けてちょっと行くと、今度は無数に並んだベッド。 おまけに誰か寝てる…。 すーすー、と。 随分と気持ち良く寝てるわね…。 訳もなく少し嫉妬した。 「あら、どうしたの?貴方もこのベッドに寝たいの?」 びくっとして振り向くと 『奴』が居た。 ただ何時もと違うのは、追いかけてこないし、目もピンクじゃないし、舌も出てない事。 これが『奴』の表の顔…。 私は警戒しながら、いえ、と答える。 何時狂い出すか分からないから。 『奴』はくすくすと笑った。 「大丈夫よ。貴方が殺そうとしない限り、あたし達鳥人間は狂わないでいてあげるから…。」 「何時も狂ってる鳥人間? そんなの居るの?」 くすくすと微笑を浮かべる鳥人間。 私は無視を決めた。 『奴』と関わったら、絶対に酷い目にあう。 そのことは自分でも良くわかっていた。 「何よ、つれない子…」 ベッドとおんなじようにクローゼットもいっぱい。 ひとつずつ開ける。 紫色の服が畳んで置いてあったり、落書きがあったり、何もなかったり。 全部調べてみたけど何もなかった。 なんて無駄足…。 はぁ…と溜め息をついて、横を向いた。 顔が並んでいる壁の端っこ。 そこの顔だけ違っていた。 口から血を流して、壁を真っ赤にしていた。 何、この壁…。 ちょっと触ると、どんどん引っ張り込まれる。 力を入れてみるけど、無駄な事。 その事に、壁に半分吸い込まれた所で気が付いた。 「あーあ…」 鳥人間が、何か呟いてたけど、結局何か分からないまま、私は壁に取り込まれた。
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