‐なのかめ‐

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目を開く。 黒い床。 床の向こうの壁だらけの世界。 背後にある、ちかちか光る扉。 始めのとこか…。 そう思いながら立ち上がった。 私は死ななかったみたい。 でも…ホントに私は処刑された。 手首に付いた、暴れて赤くなった跡。 ギロチンで飛ばされた時の近付く紫の地面。 そして、赤く染まった、リストの「なまくび」の文字。 何故生きているのか分からない。 首が飛んだのに。 狂いそうな痛みを感じたのに。 とにかく命がある事にほっとする。 私は、また自転車に乗って、違う道を進んでいく。 ちょっと進むと、突き当たりに、チャックが付いた壁。 また違う壁…? 正直もう辞めて欲しいんだけど。 なんて少しトラウマになっていながらも、近付いて触ってみてる私。 好奇心には勝てないのよ、悪かったわね。 でも、どうみてもこのチャック、壁に描かれてるのよね…。 だったら…掘り出す…? 包丁を握って、壁に突き刺した。 悲鳴。 血を流してる壁。 よく見ると…穴? 入ると、真っ直ぐな通路。 その向こうに、何かボンヤリ光る物体。 それは、そのオレンジ色で、目と口のとこが黒く窪んだ物体だった。それが、きゅっきゅっ、と手すりを磨いていた。 私は、その物体の前の階段に座っていた。 何故かは分からないけど。 ふわっと何か私の頭を撫でた。 え? 手すりを磨いていたキュッキュ君が、私の頭を撫でてくれていた。 えっと、キュッキュ君っていうのは私が勝手に付けた名前で… 別に考えるのが面倒だったわけじゃないんだから… 頭を撫でられながら、私は前を見る。 ん…? あの扉…私の部屋の扉じゃない…? キュッキュ君にはちゃんとバイバイして、扉に近付いた。 やっぱり私の部屋の扉。 この扉は何を表しているのだろう。 隠した外への憧れ? 恐怖とか不安? それは開けてみないと分からない。 真っ暗だった。 私の体も見えないぐらい。 ゴオオオオ… 赤い何かが迫ってくる。 人の顔とも見える、赤いぐちゃぐちゃの模様。 私は、訳の分からない恐怖で逃げたかった。 でも体は動かない。 赤いそれは直ぐ前まで迫る。 私はベッドから飛び起きていた。
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