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「だから、何で現地に英語が話せるやつがいないんだよ!フィリピノ語何て理解できるわけないだろ!」
携帯を構え、怒鳴る少年━紀来信護は作戦本部があるテントの前に立っていた。
《そりゃ悪かったが、勝手に行動するのは止めろ。こっちに苦情が来るんだから》
電話越しの男はめんどくさそうに答えた。
「…………あぁもう、なんでもいいや。ちゃんと金、振り込んどいてよ。俺もう帰るから、道繋いでくれ」
それだけ言うと、信護は電話を一方的に切った。
そして周りの状況を確認する。
部外者の信護がほとんど終わらせたためぎこちなくではあったが内戦は終わりを迎えた。
「確かにまずいことしたかもな」
今更になって自分勝手な行動に気付いた信護だった。
フィリピン政府がこの事態をどう報道するのかが気になる。
だが信護はこの場にいるのが危ないと判断し、即刻帰ることにした。
誰にも見つからないように周囲を警戒しながらテントの入り口に来た。
仮設のテントだが確りとした造りでコテージとも言っていいかもしれない。
信護はそのドアノブに手をかけ、扉を開く。
その向こうの景色は窮屈そうな作戦本部…………ではなく、ただの8畳ほどの部屋であった。
明かりが煌々とついているその部屋は特に変わった様子のない、一般的な高校生の部屋だった。
唯一の注目点は、棚にぎゅうぎゅうに積み込まれている漫画ぐらいである。
信護は靴を脱いで部屋に入る。
そして直ぐに扉を閉めてしまった。
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