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春風が木々を騒がし、小鳥が小声で歌を歌っている。
春。
今日の天気は
日向がぽかぽかしていて自然と異世界へと飛んでいってしまいそうだ。
「佑奈?こんなところにいたの?」
緑の芝生が暗い影や白い影を彩るなか、
ぼーっと空を眺め、少しチクチクしさを感じながらも寝転んでいる私に
ある一人の少女が話しかけてきた。
「あ、知世さん。おはようございまぁふ。」
油断をしていたらあくびをしてしまった。
まだうまく頭が働かない。
彼女は私のすぐ近くまで寄り、距離を近づけるように膝を抱え込えて座り、
「フフッ、おはよう。リラックスしてるところ悪いんだけど、今日の《シンデレラ》が待ってるわ。そろそろ起きてもらってもいいかしら?」
と微笑みながら言った。
「ふぁーい。んー、よし。充電完了!」
ゆっくり起き上がり、うぅーんと背伸びをして自分のスイッチをオンにさせる。
「じゃあ、行きましょう。」
風が優しく彼女の髪をなびかせた。
遅れをとらないように彼女の後ろを歩く。
学校の裏庭である此処から私たちが向かう彼処まで
二人にこれといった会話はない。
桜が悲しく散っていく様を
横目で見ながら、通りすぎていった。
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