燃え殻

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素敵な服だったよ。 年寄りの木こりの死体から剥がして来たんじゃないかと言うくらい、ボロボロで穴だらけで、擦り切れていた。それにとても臭かった。獣のような匂いがした。 洒落気の利いた誕生日プレゼントだった。お継母さんにしては本当に。 それにしても、よくボクの一六歳の誕生日を知ってたものだ。そちらの方が驚いてしまった。 ボクはその服に着替えて山向こうへ向かった。途中、ボクの魚に食べ物をあげるために池によった。 魚はいつものように浮かんで来て近づいて来ると、何年かぶりにボクに話しかけてきた。 「いつもありがとう。シンデレラ。今日は君の誕生日だろう。贈り物をしたいから水に入っておいで」 ボクは迷わず水に足を踏み入れた。ボクの魚はスルリと足の間にくぐって背ビレを掴むように合図した。 ボクは魚の背に乗って池の中に潜って行った。ちっとも息苦しくないし、水が口や鼻に入って来なかった。 不思議だけど、ボクは不思議に思えなかった。そのときは本当に思わなかったんだよ。
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