bibbidi-bobbidi-boo!

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また……。母さまの夢を見ていた。 体が冷えて、身震いで目が覚めた。 寒さを忍ぶため。火を消したカマドの、残った温かさをたよりに、藁を敷いて潜って眠る。いつもいつも、もう何年もそうしている。 お継母さん達がこの家にやって来てから何年もずっと。 部屋も服も取られてしまって、召使いと言うより奴隷みたいにされている。 誰もボクをエラと呼ばない。 いつもカマドの灰をかぶって仕事をしているので。 cinder=シンダー(燃え殻) ella.エラ。 シンデレラとか、火葬番のカマドの猫と呼ばれている。 ボクの名を知るのは、母さまの墓所のヘーゼルウッドに泊まる小鳥たちくらいだ。 お父さまも、死んでしまったし。 だからと言って、別に悲しくはない。 あんな風でも、お継母さんもお姉さん達もあまり賢くないから、意地悪もたかが知れてる。望み通りの惨めさを見せれば満足なのだから。 さて今日もレンズ豆の選別をしなくちゃね。 そしてたっぷり惨めを見せつけたあと、ボクはこっそり歌う。 母さまのヘーゼルウッドの前で。その程度で十分堪えられる。別に辛い訳じゃないけど。ボクは母さまに誓ったのだもの。
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