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昔、上のお姉さんに炭火を押し付けられて火傷をさせられたとき。
父さまが帰って来て、どうした? と訊かれた。
「何でもないのよ。この子馬鹿だから危ないって言うのにカマドを覗き込んで火に落ちたのよ。まったくオッチョコチョイなんだから。言い付けを守らないからいけないんだわ」
と上のお姉さんがすかさず答えた。お継母さんも、そうだと頷いた。
だからボクは黙っていた。
お父さまは顔をしかめて、危ないことをするな。と言っただけで、火傷の手当てに馬の脂を塗ってくれた。
そのお父さまも三年前に死んでしまった。
今も時々、台所のカマドの脇に寝ていて、うっかりしていると、お姉さんに燃え残りのまだ熱い灰を夜中にかけられたりもする。
おかげでまったく、ボロボロの鮫肌のまんまで、もうすぐ一六歳になる。
でもボクは悲しいとは思わないけどね。だって燃やされたのは肌だけだもの。心はボクのモノだから。今もね。
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