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数分も経たずに白い箱は僕を最上階まで運んでくれた。
チーン。
ウィーン。
左右の扉が静かに開いた。僕は息をのんだ。そこには洋式創りの図書館のようで本棚と本が高い天井に届きそうなくらい立っている部屋だった。横幅はそれ程なく、本棚が5つの列を作っていて相変わらず辺り一面白いのだが最上階というだけあって暖かな光が所々に差し込んでいる。静かな空間に神秘さを感じトオルはボーッと天井を見つめていた。そして危うく本来の目的を忘れるところだった。
そうだ。誰かいないのかな。
視線を足元に落とすと散らかり放題散らかった無数の書物とインクと羽の付いたペンが見事に沖縄料理を作り上げていた。どうすればこんなに散らかせるのか疑問に思ったがまずはこの大惨事にも似た散らかし様を作ったであろう犯人を探す事が優先だと思いトオルは恐る恐る声をかけてみた。
『…すいませ~ん…。』
口から出た声は小く弱かった。図書館を意識した訳ではない。
『…すいませ~ん。どなたかいらっしゃいませんかぁ~…。』
反応は無くトオルの声は空中を飽和する。
『すいませ~ん。』
「んぁぁ。はいはい。どなたかな?」
『…!!』
意外と近くから声がした。
『あの~僕天草トオルといいます。ロイさんが連れてきてくれました。』
「あぁ。もうそんな時間か。ふぁ~。」
『あのどこにいるんですか?』
「あぁ。ここだよ。ふぅ~。」
すると足元の崩れた書物の山の中からバタバタと男が起き上がった。突然の出来事に驚きトオルは半歩さがってしまった。
「おぬしが例の天草トオルか。なんだガキか。」
そう言いながらあくびをして頭をボリボリと掻く男の容姿は僕と背丈は然程変わりなく目付きが悪い黒髪の少年だった。
「あぁ。うたた寝のつもりがまいったなぁ。」
そう言う彼は壁に掛っている各々が違う時を刻む無数の時計を見て腕を組み困った顔をしている。
『あの~…。』
「あぁ。そうだったな。おぬしの事が先だ。ティータイムは後にしよう。」
白いスーツに黒髪が目立つようでまた自然にも見えた。
「ん?初めましてとか言えないのか?人間界の日本という国は礼儀を重んじる国だと記憶していたが。」
『あっ初めまして。天草トオルといいます。』
「うむ。よろしい。」
笑うと更に幼く感じた。
「私はジャンだ。以後よろしく。」
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