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薄暗い病院の廊下のベンチに【下地まどか】は頭を抱えながら座っていた。非常口の緑の光と手術中という赤い光だけが不安定にまどかを照らしより一層顔色を悪くしているようだった。
しばらくすると忙しい足音が廊下に響き近付いてくる。
『あっまどかちゃん。トオルは?トオルは?』
急いで走ってきたせいなのか動揺なのかトオルの父【哲男】はひどい汗のかきようだった。
『トオルは?トオル~…』
母【美紀】は眼から大粒の涙を溢し、足元もおぼつかずフラフラとよろめいてはトオルの名前をうわ言のように口にしていた。
「おじさん。おばさん。私もさっき来たので詳しい事はよく解らないんですけど…。」
『そうか。そうか…。』
『あぁトオル~…。』
「………。」
まどかはいつもと様子の違うトオルの両親を見て益々不安が募った。そして何故こんな事が起きたのか原因不明に悩みながらそれでもトオルの安否を祈ろうとしていた。
そして程なくして手術中の赤い点灯が静かに消えた。まどかはそれが希望の光が消えたように思え胸が締め付けられる思いだった。
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