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『あの~まだ着かないんですかね?』
「そうですね。でも、もうすぐですよ。」
30分ぐらい前と同じ答えだった。いつまで登らなきゃいけないんだよ。
金髪の男が右手を上げ指をパチンと鳴らすと目の前に突如白い階段が現れ「さぁ行きましょう。」と金髪の彼の言うある場所へとただ言われるがままに登る事になった。階段の先が見えない事はもう黙っていた。
『あの~確認なんですけど、ここはホームという場所で今からその中央に行って僕の今後の予定を決めるって事ですよね?』
「そうですね。」
ただ階段を登るのがあまりに暇だったので彼に説明を受けながら歩いていた。ここは物音一つせず二人の足音だけがカツカツと単調に鳴るだけで金髪の彼も平然と歩いては僕の質問に単調に答えるだけだった。
『あの~まだ着かないんですかね?』
「そうですね。でも、もうすぐですよ。」
はいはい。登りますよ。自分が死んだ事を悲しんだり悔いたりする暇も無くただひたすらに歩くしかないようだった。運動が苦手なトオルはいつしか肩で息をしていた。
あぁ。でも、さよならぐらいは言いたかったなぁ。それに高校生で死ぬなんてもっと楽しい事がこの先にいっぱいあっただろうに。それにそれに…。
「着きました。」
あっそう。着いたんだ。せっかく人がセンチな気持ちに浸っていたのにと思ったが、もう登らなくて済む事の喜びで我慢した。
トオルと金髪の男の目の前には二つスイッチのついた扉だけがある。
『これが入り口?』
「いえ。ここからはこれで行きます。」
スイッチを押すと扉が開き二人は中に入った。
「えぇ~っと。トオル様は中央ですよね。それでは10092階ですね。」
中にあるスイッチを押すと扉は閉まり何やら動いているようだった。
『これエレベータですか?』
「ええ。そうです。」
『じゃぁ最初からこれで行けばよかっ』
「人間界でいうと151年と3ヶ月と41時間12秒です。」
『えっ?』
「階段を歩き続ける時間です。早急にお連れしろと言われていたのをすっかり忘れてまして。ははは。」
『ははは…』
笑えないって。
『で、これで行くとどれくらいで着くんですか?』
チーン。
「着きました。」
白いエレベータの扉が開くと眩しい光が射しこんできて目が慣れるのに時間がかかってしまった。
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