READY

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「気を付けていれば危険は無いので。」   『…』   何故か解らないけど凄いんだなと思った。それは彼の説明を聞いたからでは無く、これまで平然とした面持ちの彼が初めて感情を出したように感じたからだ。それにどこか悲しそうにも見えてこれも初めてみる感情だった。だからこそこの【シン】が大切なんだと間接的にわかった。   「トオル様?」   『えっあっはい。』   「着きましたよ。」   ビルに近付いてみると更に高く感じて一瞬尻込んでしまった。でも   『これで僕が何でここにいるか全部解るんですね?』   「はい。仕事上私が申し上げる事はできませんのでご自身の足でお進みください。」   『ありがとう。…えっと…。』   「ロイと申します。」   『ありがとう。ロイさん。』   ビルの入り口の前まで来ると自動ドアがスーッと開いた。とりあえずこれで不可解な謎も少しは理解できるだろう。   『そういえば!!』   振り返るトオル。   「どうされました?」   『何階ですか?ははは。』   いつもの微笑みのロイ。   「最上階です。最上階しか行きませんから大丈夫です。」   『わかった。』   何かここに来て初めて笑ったような気がした。   「あっ重要な事を言い忘れました。最上階に行くとある人がいます。気さくなお人なのですが人を外見で判断なさらないようにお願いしますね。」   『わかりました。』   トオルは振り返りドアをくぐった。僕は今後どうなるんだろうという不安と死んでしまった実感をいつか抱いてしまうだろうという恐怖とこの最上階に待つ人が誰なのかという謎と少しの好奇心で複雑な胸中でいた。それでも僕はまだ生きていたかった。だから会いにいこう。さすがに階段では行かずにエレベータのスイッチの上のマークを人差し指で軽く押した。そして最上階へと昇っていった。
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