5

2/4
前へ
/38ページ
次へ
おそろしく真面目な顔でキスをしてくる恭一が、とても愛しかった。 気取らず、お箸でフルコースを食べていた恭一。 わたしが、わたしでいてもいい人なんだと思えた。 恭一は、不器用にわたしが身に着けているものを剥いでいった。 「まさか、わたしのことずっと好きでいてくれたの?」 卒業式の告白をふと、思い出す。 「忘れられなかっただけだよ・・・」 激情に流されるような体の疼きは感じなかったけれど、恭一の愛撫はひだまりのように暖かい。 恭一は、わたしの首筋や鎖骨のあたりにそっと這わせていた唇をやすめて、真面目な顔でキスをしてきた。 そして、わたしの目を見ながら優しく、優しく髪をなでた。 体を求めるより先に、わたしの頭を何度も何度もなでた。 心のどこかで、きっと今夜限りになりそうだと思っていたのが、急に恥ずかしくなった。 失いたくないと、思った。 ,
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

344人が本棚に入れています
本棚に追加