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おそろしく真面目な顔でキスをしてくる恭一が、とても愛しかった。
気取らず、お箸でフルコースを食べていた恭一。
わたしが、わたしでいてもいい人なんだと思えた。
恭一は、不器用にわたしが身に着けているものを剥いでいった。
「まさか、わたしのことずっと好きでいてくれたの?」
卒業式の告白をふと、思い出す。
「忘れられなかっただけだよ・・・」
激情に流されるような体の疼きは感じなかったけれど、恭一の愛撫はひだまりのように暖かい。
恭一は、わたしの首筋や鎖骨のあたりにそっと這わせていた唇をやすめて、真面目な顔でキスをしてきた。
そして、わたしの目を見ながら優しく、優しく髪をなでた。
体を求めるより先に、わたしの頭を何度も何度もなでた。
心のどこかで、きっと今夜限りになりそうだと思っていたのが、急に恥ずかしくなった。
失いたくないと、思った。
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