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会いたくて。
どうしても、彼女を忘れられない俺は、美奈子に電話をして、何年かぶりに会うことになった。
高校の卒業式にあっさり振られてから、会うことも、電話で話すこともなかった。葉子とは何度か飲みに行ったり、遊んだりはしていたらしいのだが…。
たまたま美奈子が勤めている会社が取引先になったのをいいわけに、俺は美奈子に会いたいと言った…。
思いの外、あっさりと約束をかわす。
これは、多分、今は男がいないからなのだろう。
「お前、高校卒業から会ってないけど変わらないなぁ」
「そう?きれいになったねとか、お世辞でも言ったら?」
俺は爆笑した。
綺麗だよ。
昔から、君は、誰よりも綺麗だよ…。
美奈子は少し、肩の荷が下りたような顔をしていた。
こいつはこいつなりに、肩肘はって生きてるんだろう。
「この間、同窓会があったんだよ。お前来なかっただろ?」
男とデートだったのか?
とは、口には出さなかった。
「用があったのよ。でも、行けばよかったわ」
俺は、二次会で集まった面子の近況報告をした。
美奈子は楽しそうに話を聞き、化粧の施された美しい横顔に、時折、高校生の頃の面影を浮かべた。
早く大人になりたいと願っていた君。
ひっそりと、俺は、彼女の体を一時的にでも独占したであろう何人かの男たちに、暗い嫉妬の炎を燃やした。
なぜ、美奈子の隣に彼氏として座れないのだろう。
こんなに、長い間、好きなのに…。
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