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「おかしいでしょ!?」
葉子はビールを呑みながら、叫ぶように言った。
不倫関係だった店長が移動になり、一方的に別れを告げられたのだと、浴びるように飲んでいる。
「美奈子は、バカ高い美術品かなんか売り付けられそうになってるし。あたしたち、不幸だわ」
葉子は憤慨している。
美奈子は、新しい男に絵画や彫刻を売り付けられそうになり、別れたらしかった。
同窓会以来、久しぶりに集まった地元の飲み屋に、やはり美奈子はいない。
「恭一ぃ、チャンスじゃねぇ?」
いつも乗る通勤電車で、女子高生に告白されたという聡はご機嫌に酔っている。
「自由奔放を俺の彼女に分けてくれ…」
明は相変わらず早いピッチで呑みながら独り言を言った。
男性恐怖症の彼女と、やっとキスができたと興奮して電話してきたのが先月だった。
明は、さらにその先を目指しているようだ。
博は薄い唇の端に、笑みを浮かべている。
「そろそろ、恭一のよさに気がつくんじゃないか?」
皆にそうおだてられて卒業式に告白したのを思い出した。
「そうだといいんだけどな…」
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