その6 ボウリング大会(序章)

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杏門って… 多摩都市モノレール・立川南口駅の真ん前のNACビルB1にあるんだよ。 その階段を下りる時、本当にに心臓が口から飛び出す程ドキドキする。 今日はすごく混んでいる。 なにしろ、年に一度のボウリング大会だから! ……“カサブランカ”…… あの子に用意した花だよ。 それしか思いつかなかった。 楽園に咲き誇る、高貴な純白の大輪のユリ。 ショーのラストに、たっちゃんがヒラヒラフリフリの白いシャツブラウスに、黒のタキシード、シルクハットで踊るんだけど…… あの衣装には、もう・カサブランカしかない! カサブランカはたっちゃんの花。 喜んでくれるかなあ? 結構大きな束、受付で預かってもらう。 渡す時がすごく楽しみ。 うふふ…顔が笑っちゃう。 案内されて店内へ…たっちゃんを目で探す。ドキドキは極限。 “どこ?たっちゃんはどこ?!居た!!” 一番奥のお客の、カウンター席でしゃべってる。 ゆかた祭りとはうって変わって、ノースリーブ・黄色とグレーのアニメキャラのシャツにジーパン。すごくラフな若者らしいスタイルで、夢中になってしゃべってる。 次女に合図、すかさずビデオカメラ作動。 「お出でお出でしてみなよ」と次女。 手招きした。 ドキドキはもう、失神寸前、パニック状態だわ。 これからビデオカメラとデジカメで、たっちゃんの美しい顔と姿を撮りまくるんだよ~!! カメラ目線…と言うのは、こんなに遠くからでも感じるらしい。 「あっ?!」っと言う顔して、手を振りかえした。ゆっくりと近づいて来た。 「おはよーございまーす」と、その甘いベビーフェイスとは、およそ似つかわしくない体育会系の大きな声で、元気良く挨拶する。 さて,この子がテーブルに居るのは、たかだか10分、その短い間に聞きたい事、言いたい事をしゃべらなきゃあ… 「お願いがあるんだけど…」 「いいよ、なに?」 「じゃあ,はい…まずこれ」 と言ってサインペンを出す。 「それとこれ…」あらかじめ用意しておいた、質問を書いた紙をたっちゃんの前に置く。 「K子さんへって書いて下さい」と次女が言い、サインペンを持って… 一応は色紙に向かい“K子さんへ”と書いてから、たっちゃんはしばらくじっと考えてペンをしまった。 「ちょっと待って、ちょっと待って。 ゆっくりやろう」 言い残して元の席に戻って行った。 「後で来る」と言ってたけど…なんだ、もう終わりかよ!と思ってたら、本当にすぐに来た。image=54748890.jpg
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