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早く呆れて帰ればいいのに、なんて素直じゃないあたし。本当はあたしの腕を無理矢理にでも引っ張って引き寄せて抱きしめてくれたら…だなんてあたしもバカだ。
「……………。」
あれから一言もケイゴは言葉を口にしない。だけど同じペースで聞こえる足音がついてきている事を物語っていて、安心するような、だけど早くこの状況をどうにかしてほしいような苛立ち。段々情けなくなってきて、視界が霞んできた。
違うの…違うの。本当は喧嘩なんかしたくない、ただ一緒にいれたらよかったの。だけどケイゴの側にいるとどんどん欲が出て来て、ケイゴの視界に1番入っていたいとか、触れてほしいとか、…ああ、もうあたしのバカ。
「ミチル、待って」
「っ」
もうすぐ駅に着く頃、望んでいたようにケイゴはあたしの腕を強く引っ張り、引き寄せ、あたしを抱きしめた。途端に涙腺は開放され涙が溢れだした。次第にケイゴの服がシミになってゆく。
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